「あ」

気付いたときには遅かった。

階段を上っていたはずの私の身体は宙に浮き、今まさに下に落ちようとしている。



ドジった。
最近は激務で睡眠時間は削られ、完全に寝不足だった。おまけに栄養不足による貧血。
そろそろキャパオーバーかもしれないと思っていても、仕事は次から次へとやってくる。

フラフラするなぁと思っていた矢先のことだった。



頭が回らず受け身も取れそうにない。
これはヤバいかもしれない。




なんて、我ながら冷静だなと思うけど。
















「おっと」

衝撃を覚悟していると、何やら柔らかくて温かいものが全身を覆った。
不思議に思って目を開けると、パンダが私を見下ろしていた。
どうやらパンダが受け止めてくれたらしい。


「大丈夫か、なまえ」
「あー・・・ありがとう、助かった」

そう答えると、すぐに真希と狗巻くんもやって来た。


「高菜!」
「おいおい大丈夫か、なまえ。顔色悪いぞ」
「うん、ちょっと寝不足で・・・」

そう言いながら今にも寝そうだった。
パンダの温かいお腹が心地いい。




「おいおいなまえ、このまま寝るなよ」
「しゃけ」
「なまえ、寝るなら運んでやるから医務室行けよ」
「えー・・・無理。パンダのモフモフ気持ちいー・・・」


私の意識は完全にそこで飛んだ。




「あ?おいなまえ?・・・・・・・・寝やがった」
「マジで?のび太君かよ」
「明太子・・・」
「しょうがない、医務室運ぶか」


「その必要はないよー」



なまえを担ぎ直し、3人は医務室へ向かおうとすると、背後に五条が立っていた。
いつからそこにいたんだ、といかにも面倒くさそうに真希が顔を歪める。
それを無視して五条がパンダからをなまえ取り上げ、横抱きに抱えた。


「学生の貴重な休み時間を使わせるのは申し訳ないからね。僕が責任持って運んでおくよ」

そう言うと五条は3人に背を向けて歩いて行った。
取り残された3人は、互いを見やって溜め息を吐いた。



「あれ、真っ直ぐ医務室向かうと思うか?」
「おかか」
「そうだな、あれは確実に別コースだ」
「ったく、なまえも変なのに捕まったもんだな」
「しゃけ」
「まぁ、平和で何よりだな」










翌日、やけに上機嫌な五条と、寝不足は解消されたようだが別の意味でげっそりしたなまえを見かけた3人は、ただただ、ご愁傷様、と思わずにはいられなかった。